エアレギュレータとは?基本情報から点検方法やトラブルシューティングまで

エアレギュレータは、圧縮空気の供給圧力を必要な値に調整し、産業機器の安全性と作業効率を確保する重要な調圧機器です。工業機器、建設現場、食品加工など、幅広い分野で使用されています。本記事では、エアレギュレータの役割や基本的な機能から、選定方法、メンテナンスのポイント、トラブルシューティングに至るまで、詳しくご紹介します。

エアレギュレータとは?

エアレギュレータ(減圧弁)は、圧縮空気の圧力を調整し、特定の圧力に減圧するための機器です。主にエアコンプレッサから供給される高圧の空気を、各種エア機器にとっての適切な圧力まで下げる役割を果たします。

基本的な機能

エアレギュレータには主に2つの重要な機能があります。

減圧

エアレギュレータは高圧の圧縮空気を所定の圧力に減圧する機能を持ちます。

製造現場では、コンプレッサから供給される圧縮空気が様々なエア機器に分配されています。

コンプレッサから供給される圧縮空気は高圧ですが、エア機器にはあらかじめ定められた耐圧があり、必ずしも高圧に対応しているわけではありません。必要以上の圧力は、機器にダメージを与え、システム全体の効率を下げる原因になります。そのため、二次側に使用するシリンダやバルブなどの機器が持つ最高使用圧力の範囲内に圧力を調整する必要があります。

例えば、コンプレッサから供給される圧縮空気が0.7 MPaの場合でも、エアレギュレータを使って0.5 MPaなど機器の推奨範囲へ圧力を下げることで、エア機器を安全かつ最適に動作させることができます。

脈動抑制

圧縮空気の流れを安定させることで、機器の性能を最大限に引き出します。

コンプレッサからの圧縮空気は、供給中に脈動(圧力の変動)を伴うことがあり、これがエアシリンダの推力の不安定化や機器の寿命短縮につながることがあります。レギュレータはこの脈動を抑える役割を果たしています。エアレギュレータは高圧の圧縮空気を所定の圧力に減圧する機能を持ちます。

圧力調整の必要がない場合でも、安定した圧力状態でエア供給するためにレギュレータを使用することが推奨されます。

エアレギュレータの主な構成要素

エアレギュレータは、複数の部品から成り立っています。以下はその主な構成要素です。

部品名 詳細
調圧ノブ 圧力を調整するための手動操作部です。
リリーフポート 二次側圧力が設定値以上になった時、余分な圧力を外部に逃がすためのポートです。リリーフポートがないレギュレータもあります。
調圧スプリング 弁シートの開閉を調整する役割を担います。
ダイヤフラム組立 ダイヤフラムとは薄膜のことを指します。流れ出した圧縮空気がダイヤフラム組立に作用し、調圧スプリングとの力のバランスを取ることで、正確に圧力を制御しています。また、調整ノブを緩めると、二次側圧力によってダイヤフラム組立が上昇し、リリーフポートを通じて余分な空気を外部に排出します。
フィードバックポート 二次側の圧力がフィードバックポートを通じてダイヤフラム組立に伝えられます。ダイヤフラム組立は設定されたスプリング力に対し、圧力バランスを保ちます。
ステム 弁棒とも言い、弁の開閉を直接的に行う、あるいはその動きを伝えるための棒状の部品です。
弁シート 弁が密閉する際に接する面です。弁がしっかりと閉まり、流体が漏れないようにするために非常に重要な役割を果たしています。
弁ばね 弁を閉じるために使用されるばねです。

エアレギュレータの選定に必要な情報

エアレギュレータを選定する際には、以下の情報を把握しておく必要があります。

圧力条件の確認

一次側圧力(高圧)と二次側圧力(低圧)を確認する必要があります。選定するエアレギュレータは、使用するエア機器が求める圧力に対応できる圧力レンジのものを選びましょう。

流量の把握

使用するエア機器やシステムが必要とする流量を正確に把握しましょう。例えば、特定のエア機器が300L/minの空気を必要とする場合、その流量に対応できるレギュレータを選ぶ必要があります。

商品ページ

使用環境と温度

屋内・屋外で使用するのか、粉塵が発生する環境なのか、あるいはグリスを嫌う環境なのかなど、レギュレータを使用する環境は様々です。例えば、高温環境や低温環境では、材質の指定が必要な場合もあります。使用環境の温度範囲や材質、機能を考慮して選びましょう。

配管サイズの確認

レギュレータには入口と出口に異なるサイズのネジが設けられていることもあります。使用する配管に適合するサイズを選ぶことが必要です。

圧力計の種類

圧力計の有無も重要な要素です。圧力計にはアナログ式とデジタル式の2種類があります。また、必要に応じて圧力スイッチを組み合わせることで、設定圧力に達した際にシステムを制御することもできます。用途に応じて最適なタイプを選びましょう。

その他の機能

特定の用途に応じた機能や付属品が必要な場合は、フィルタ付レギュレータや精密レギュレータ、ブラケット、継手など、使用環境や目的に応じて適切な製品、オプションを選びましょう。

エアレギュレータの点検とメンテナンス方法

エアレギュレータを長く使用するためには、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。
なお、点検・メンテナンスは、供給圧力を止めて残圧がないことを確認してから行いましょう。

点検の頻度

エアレギュレータを長く使用するためには、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。

点検の目安 点検内容
日常点検
(1日1回)
・動作確認
本製品を使用する前に、正常に作動することを確認しましょう。
・ルブリケータの油滴下量
滴下不良があると、対象物の潤滑トラブルの原因になります。
定期点検
(半年に1回以上)
・配管からの漏れがないか
配管から漏れが発生すると、圧力低下、エネルギー効率の低下、機器の故障リスクの増加などのトラブルの原因になります。
・本体にクラック、傷、その他の劣化がないか
クラック、傷、その他の劣化が認められた場合は、破損の原因になるため、新しい部品に交換してください。
・フィルタエレメントに目詰まりが発生していないか(※フィルタ・レギュレータのみ)
エレメントの目詰まりは性能低下の原因になります。環境や使用頻度によって、不具合の発生頻度は異なります。そのため、最初は短いスパンで点検を行い、状況を見ながら点検周期を設定しましょう。

ドレン排出(※フィルタ・レギュレータのみ)

二次側に溜まった水分(ドレン)が流入すると機器の作動不良の原因になるため、ドレンを定期的に排出する必要があります。特に湿度の高い環境では、ドレンの排出頻度を増やす、オートドレン付きの製品を選定するなどの対応が必要です。

ルブリケータは、オイル下限位置を下回らないように、定期的に給油してください。

トラブルの原因と処置方法(トラブルシューティング)

目的通りに作動しない場合は、下記の表に従って点検する必要があります。

不具合現象 原因 処置方法
起動直後にドレンが出る ドレン量が上限位置を超えている ドレンを排出する
最大処理流量を超えて使用している 使用流量に機種に交換する
ドレンコックを開いてもドレンを排出しない 異物がドレンポートに詰まっている 圧縮空気を止めてボウル組立を外し、ボウル内部を清掃する。
清掃しても不具合が改善できない場合は、ボウル組立を交換する
オートドレン付きで、ドレンを自動排出しない、または空気がドレンポートから漏れる オートドレンが故障している、またはごみが詰まっている
ボウル取付部から空気が漏れる ボウルシール用Oリングに傷または異物付着がある 圧縮空気を止めてボウル組立を外し、Oリングを清掃または新品に交換する
ボウルが破損している 圧縮空気を止めてボウル組立を外し、ボウル組立を新品に交換する
一次側圧力を加えると、カバーとノブの隙間からエア漏れがある IN、OUTが逆に接続されている 正しい取付方向に直す
圧力が上がらない 一次側圧力が不足している 一次側圧力をチェックする
一次側配管が長い、または絞られているボウルが破損している 一次側配管を短くするまたは配管径を大きくする
圧力計の針が動かない 圧力計が故障している可能性があるため、圧力計を新品に交換する
圧力が下がらない レギュレータに背圧がかかっている システムに問題がないか検討する
ノンリリーフタイプのため、リリーフしない リリーフタイプの製品に変更する
カバーから漏れが発生する、
設定圧力が異常に上昇する
バルブにごみが付着している、
ダイヤフラムが破損している
部品を清掃または交換する
二次側圧力が脈動する 配管条件や使用方法によっては、脈動が発生することがある 一次側圧力を下げて使用するか、配管を絞る

エアレギュレータが使用される産業・分野

エアレギュレータは様々な分野で使用されています。

製造業などの工業用機器

工場の生産ラインでは、多くの工業用機器が空気圧を利用して稼働しています。これらの機器は安定した圧力供給がなければ、性能を十分に発揮できません。エアレギュレータは、圧力を調整し脈動を抑えることで、各機器が安定して稼働できるようサポートしています。

食品加工

食品加工機器においても、エアレギュレータが流体の圧力を一定に保つことで、製造工程を安定させ、機器が効率的に動作する環境を整えています。

食品加工機器の駆動以外にも、食品容器の搬送やエアブロー、食品へのエア添加、窒素充填による酸化防止工程などにエアレギュレータが使用されています。

建設業

建設現場では、インパクトドライバやエアダスタなどの工具、空圧ドリフタや空圧ハンマといった機器が多く使用されています。これらの機器が安定して稼働するためには、必要な圧力を維持することが必要です。エアレギュレータは、この圧力調整の役割を担っています。

エアレギュレータと電空レギュレータの違い

エアレギュレータは、手動や機械的な方法で圧力を調整し、比較的シンプルな構造で一般的な圧力制御に適しています。

一方、電空レギュレータは入力信号に応じて電子的に圧力を制御する装置で、高精度かつ自由度の高い制御が可能です。

電空レギュレータは、入力信号と内部に搭載された圧力センサ信号の差に応じて動作させるフィードバック制御が搭載されています。入力信号と実際の圧力との偏差に基づいて圧力を自動調整できるため、生産設備において多品種生産や高機能・高精度化が求められるシーンで特に有効です。

さらに、電空レギュレータは空気の流量を変化させることが求められる場合にも適しています。

CKDのエアレギュレータ

CKDは、基本モデルから高性能タイプまで、豊富なエアレギュレータを提供しています。

製造現場での精密加工には高精度タイプを、屋外の厳しい環境下でも使用いただける屋外仕様シリーズをお選びいただけます。また、設置スペースを抑えたコンパクトモデルや、食品工場向けのシリーズなど、現場のご要望に応じた製品を取り揃えています。

CKDは製品の導入前から導入後までトータルサポート。現場を知り尽くしたスペシャリストがあなたの課題を解決に導きます。

詳しい製品情報は、CKDのエアレギュレータ製品一覧でご確認ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

関連記事

リバースレギュレータは、内蔵されたチェック弁により、二次側(OUT側)の圧力を迅速に一次側(IN側)へ排出できます。 そのため、バランサなどで標準のレギュレータでは二次側圧力を十分に排気できない場合や、リリーフ弁以上の排気が必要な場合に適しています。

フィルタ・レギュレータやレギュレータを取り付ける際、流れ方向の違いで圧力計が反対側を向き、圧力確認が困難になることがあります。CKDのレギュレータは、圧力計を取り外して取り付け面を変更することで、この問題を解決できます。