電空レギュレータとは?基礎情報から点検方法やトラブルシューティングまで

電空レギュレータは、半導体製造装置や液体塗布装置など、高度な圧力管理が必要な産業分野で広く採用されており、自動化や品質向上に貢献しています。本記事では、電空レギュレータの基本的な機能や特性から、選定のポイント、メンテナンス方法、トラブルシューティングまで、実務に役立つ情報をご紹介します。

電空レギュレータとは?

電空レギュレータとは、電気信号に比例して空気圧を変化させる機器です。比例制御弁に分類され、入力された電気信号に応じて出力空気圧を連続的にコントロールします。圧力を無段階で調整できるため、高精度での圧力コントロールが可能であり、手動のレギュレータと異なり、運転中でも遠隔で圧力を調整できます。

基本的な特性

電空レギュレータには以下の4つの特徴があります。

精密な圧力制御

従来の手動式レギュレータと異なり、電気信号により自由に圧力・流量を変化させることが可能で、電気を用いた制御装置により、無段階連続制御を行うことができます。

システムとして使う場合は、上位コントローラからの信号をD/A(デジタル→アナログ)変換器にてDC0-10Vなどの信号に変換し、コントローラを介して電空レギュレータを作動させて、各種アクチュエータなどの推力・速度を自由に制御する回路となります。また、必要に応じてセンサでフィードバックすることにより、高精度の制御も可能です。

フィードバック制御

電空レギュレータは内部に圧力センサを搭載しており、このセンサで常に出力圧力を監視しています。

出力圧力を常にモニタリングしながら自動的に圧力調整を行うことで、外部環境の変化や負荷変動があっても安定した圧力制御を可能にしています。

また、最新の電空レギュレータでは、定常偏差(目標値と出力される制御値との定常状態での偏差)を補正する新しい制御方式を採用し、さらに高精度な圧力制御が可能になりました。

通信機能

電空レギュレータは、CC-Link、DeviceNet、IO-Linkなどの産業用通信プロトコルに対応しており、上位ネットワークとの連携が可能です。遠隔での圧力設定や監視、複数の電空レギュレータの集中管理にも対応できます。

例えば、CC-Link通信対応の電空レギュレータでは、PLCから圧力設定値の変更や現在の出力圧力値の読み取りが可能です。また、異常診断情報も通信を介して取得できるため、予防保全にも活用できます。

IO-Link対応機種では、より詳細なパラメータ設定や診断情報の取得が可能になり、Industry 4.0やIIoTへの対応も進んでいます。

電空レギュレータの主な構成要素

部品名 詳細
制御基板 主な役割は、入力された電気信号の処理とフィードバック制御の実行です。制御基板は高度な制御アルゴリズムを実行し、高精度な圧力制御を実現する中枢部分として機能しています。
圧力センサ 圧力センサは出力圧力を高精度に検出し、その信号を制御基板へ送ります。検出された圧力信号は制御基板で処理され、設定値との偏差を算出するために使用されます。
給気用/排気用電磁弁 給気弁は供給圧力と出力ポートを接続し、排気弁は出力ポートと排気ポートを接続します。給気弁と排気弁は、ダイアフラム組立と連動して動作することで、圧力を制御しています。
パイロット室 パイロット室は、圧力制御を行うための空間です。給気用/排気用電磁弁からの圧力を受け、その圧力によってダイアフラムを動作させる役割を担っています。
フィードバック室 入力信号に応じてパイロット室とフィードバック室の圧力バランスが一定になるように圧力が制御されています。

電空レギュレータの選定に必要な情報

電空レギュレータを選定する際には、以下の情報を把握しておく必要があります。

圧力条件の確認

一次側圧力(高圧)と二次側圧力(低圧)を確認する必要があります。選定するレギュレータは、使用するエアツールや機器が求める圧力に対応できる圧力レンジのものを選びましょう。

流量の把握

使用するエアツールやシステムが必要とする流量を正確に把握しましょう。例えば、特定のエアツールが300L/minの空気を必要とする場合、その流量に対応できるレギュレータを選ぶ必要があります。

使用条件

配線スペースや設置スペースが限られているか、圧力表示やエラー表示の有無など、必要な機能を考慮して選びましょう。

配管サイズの確認

レギュレータには入口と出口に異なるサイズのネジが設けられていることもあります。使用する配管に適合するサイズを選ぶことが必要です。

入力信号

DC0-10V、DC0-5V、4-20mA、パラレル10bit、0-20mA、1-5VDC、可変抵抗入力、IO-Linkなどの入力信号が選択できます。

すべての電空レギュレータが、すべての入力信号に対応しているわけではありません。必要な信号に合わせて、対応している機種を選定する必要があります。

その他

入力信号に応じたケーブル、ブラケット、継手など、使用環境や目的に応じて適切な製品、オプションを選びましょう。

電空レギュレータの点検とメンテナンス方法

電空レギュレータを長く使用するためには、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。メンテナンスは、事前に電源をOFFし、圧縮空気の供給を止めて残圧のないことを確認しましょう。

点検の頻度

エアレギュレータを長く使用するためには、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。

1年間に1回以上確認する事項 内容
供給圧縮空気の圧力管理 設定圧力で供給されていますか?
装置作動中の圧力計の指示は設定圧力を示していますか?
空気圧フィルタの管理 ドレンは正常に排出されていますか?
ボウル、エレメントは汚れていませんか?
配管接続部分の圧縮空気漏れ管理 特に、可動部分の接続状況は正常ですか?
(配管に漏れがあると、正常に動作しない場合があります)
作動状態管理 作動の遅れはありませんか?
排気状態は正常ですか?
空気圧アクチュエータ作動状態管理 作動はスムーズですか?
終端停止状態は正常ですか?
負荷との連結部分は正常ですか?

環境や使用頻度によって、不具合の発生頻度は異なります。そのため、最初は短いスパンで点検を行い、状況を見ながら点検周期を設定しましょう。

トラブルの原因と処置方法(トラブルシューティング)

目的通りに作動しない場合は、下記の表に従って点検する必要があります。

不具合現象 原因 処置方法
大きなうなり音がする 最大流量以上の大きな漏れがある このような状態で使い続けると、寿命が極端に短くなるため、使用方法を再検討する
二次側配管からリリーフ性能を超えるエアの回り込みがある このような状態で使い続けると、寿命が極端に短くなるため、使用方法を再検討する
一次側圧力が供給されていない状態で、電源がONになっており、入力信号が設定されている 一次側圧力が供給された状態で、電源供給、入力信号を設定する
一次側圧力を超えた入力信号が設定されている 一次側の供給圧力を最低使用圧力以上に確保する
一次側圧力が最低使用圧力を下回っている 一次側の供給圧力を最低使用圧力以上に確保する
電源をOFFしても1%F.S.以上の圧力が出力される 入力信号を設定した状態で、電源をOFFにした 電源をONにして、入力信号を0%に設定する
電源OFFの状態で、一次側圧力を供給したまま長時間放置した 長時間使用しない場合は、一次側の圧力をゼロにする
万が一、二次側圧力が上昇した状態になった場合は、電源をONにし、入力信号を0%に設定する
製品が故障している 配管、配線に異常がないか、再度確認したうえで製品を交換する
一次側の圧力がそのまま出力される 製品が故障している 配管、配線に異常がないか、再度確認したうえで製品を交換する
圧力が制御できない 入力信号が異常になっている アナログタイプの場合、入力信号のコモンと電源のグランドが共通に配線されているか確認する
圧力センサが故障している 製品を交換する
別配管から回り込みなどにより、二次側に過大な圧力がかかる可能性がないことを確認する
圧力が出力されない 一次側圧力が供給されていない 一次側の供給圧力が、最低使用圧力以上であることを確認する
配線に異常がある 配線が正常であることを再確認する
また、コネクタが正常に接続されているか確認する
圧力が設定圧まで上がらない 一次側圧力が不足している 一次側の供給圧力を最低使用圧力以上に確保する
圧力が下がらない 排気ポートの流路がふさがれている Rポート、EXHポートからエアが排気できるように配置する
圧力が安定しない 電源電圧が不安定である 電源電圧は本製品の仕様に合った安定化電源を使用する
入力信号が不安定である ノイズの影響を確認する
シールド線は電源側のグランドに落とす
一次側圧力が不安定である 一次側にレギュレータを設置する
配管に漏れがある 一次側、二次側の配管の漏れを確認する
圧力が発振する 制御圧力に対して一次側圧力が大きすぎる 一次側の供給圧力を最低使用圧力以上に確保する範囲でできる限り下げる
二次側の配管容積のミスマッチや漏れ、異物混入などがある 発振は、配管条件の変更により回避できる場合があるため、二次側の配管径や負荷容積の増減、漏れの見直しなどを試す
※比例値の変更(比例値ダウン)で圧力が安定する場合がある

電空レギュレータが使用される産業・分野

電空レギュレータは、高精度な圧力制御が求められる様々な産業分野で活用されています。

特に半導体製造装置では、ウエハの搬送や保持、研磨工程での押圧制御など、精密な圧力管理が必要な工程で採用されています。また、液晶パネルやタッチパネルの製造工程でも、各種塗布装置の圧力制御に使用されています。

医薬品製造分野では、錠剤の打錠圧力制御や、液体医薬品の定量吐出制御など、高い品質管理が求められる工程で使用されています。

その他、以下のような産業分野でも活用されています。
・食品製造工程での充填圧力制御
・フィルム製造工程でのテンションコントロール
・ロボット産業での把持力制御
・印刷機械での印圧制御

電空レギュレータとエアレギュレータの違い

電空レギュレータとエアレギュレータの主な違いは制御方式にあります。電空レギュレータは電気信号によって自動で圧力を制御するのに対し、エアレギュレータは手動で圧力を調整します。

電空レギュレータは、入力された電気信号に応じて出力圧力を無段階に調整できるため、遠隔操作や自動制御が可能です。また、フィードバック制御により高精度な圧力制御を実現できます。

一方、エアレギュレータは手動でハンドルを回して圧力を調整する機構で、調整後は設定した圧力を一定に保ちます。エアレギュレータについての詳細は下記をご覧ください。

CKDの電空レギュレータ

CKDの電空レギュレータは、産業界の多様なニーズに応える高性能なラインナップを揃えています。

これらのレギュレータは、高速な応答性と優れた安定性を備え、テンション制御や圧力調整が求められるさまざまなシステムに適しています。さらに、CKDの製品は、省スペース設計と簡単な操作性を特徴としており、生産ラインの効率化をサポートします。

詳しい製品情報は、CKDの電空レギュレータ製品一覧でご確認ください。

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