結露の仕組みとは?|一般家庭と工場における2つの場面から解説
結露は、住宅の窓や壁、工場設備の表面など、さまざまな場所で発生し、私たちの生活や産業活動に影響を与えています。今回は、結露のメカニズムを詳しく解説し、家庭と工場それぞれの場面で発生する結露の具体的な影響と対策についてご紹介します。
結露とは?
結露とは、空気中の水蒸気(気体)が、冷たい物体の表面で液体の水滴となり付着する現象です。温かい空気が急に冷やされることで、空気中の水蒸気が凝縮して水滴になります。

結露のメカニズム(露点と飽和水蒸気量)
結露の発生には、空気の温度と水分量が深く関わっています。ここでは、結露を理解する上で欠かせない「飽和水蒸気量」と「露点(ろてん)」について詳しく説明していきます。
空気中に含まれる水分量の限界(飽和水蒸気量)
空気中には目に見えない水蒸気が含まれています。この空気に含まれる水分の量は、空気の温度によって決まり、含むことができる最大の水蒸気量を飽和水蒸気量と言います。
暖かい空気ほど多くの水蒸気を含むことができ、冷たい空気ほど含む水蒸気の量は少なくなります。
露点温度とは何か
空気中の水蒸気が凝結し始め、水滴に変わる温度を露点温度と言います。空気中に含まれる水蒸気の量を変えずに温度を下げていくと、ある時点で湿度が100%になり、水滴が生じ始めます。この温度が「露点」です。
結露が起こる仕組み
空気中には見えなくても必ず一定量の水蒸気が含まれています。
空気の温度が下がると、それまで空気中に含まれていた水蒸気を含みきれなくなり、水滴となって現れます。
断熱膨張と結露の関係
スプレー缶を使用すると缶が冷たく感じられることがあります。これは、缶の中の液体が外部に噴射される際に断熱膨張という現象が起こるためです。
断熱膨張とは、外から熱をもらわずに気体や液体が膨らむことです。スプレー缶では、高圧で圧縮されていた液体が外部に放出される際に急激に膨張し、この時に温度が低下します。その結果、缶自体も冷たくなるのです。
このような断熱膨張は身の回りでも観察できます。空気の温度が下がると飽和水蒸気量が小さくなり、それまで気体として保持できていた水蒸気の一部を保持しきれなくなります。その結果、微細な水滴(霧状の水滴)が現れることがあります。
この現象が繰り返し発生すると、配管の内部などに水滴が付着・蓄積し、やがて目に見える形の結露となるのです。
結露が発生しやすい条件|温度差と湿度
結露の発生には、温度と湿度が大きく影響します。ここでは、それぞれの条件がどのように結露の発生に影響を与えるのかを解説します。
温度差と露点超過
結露は主に「暖かく湿った空気」と「冷たい表面」の組み合わせで発生します。
例えば、室内外の温度差が大きい環境や冷たい飲み物をコップに入れたときに、露点を超過して結露が発生します。
湿度が高いほど露点温度も高くなる
室内で加湿器を使っていたり、人の呼気で湿度が上がったりしていると、高い温度でも結露しやすくなります。
これは、湿度が高いほど空気中に多くの水蒸気が含まれており、露点温度に達しやすくなるためです。
季節による結露発生の違い
冬は室内暖房と外気温の差が大きいため、窓ガラスや壁で結露が発生しやすくなります。
また、夏は高温多湿であるうえ冷房を使うため、室内の湿った空気が冷たい壁や窓に触れて結露が発生しやすい季節です。
冬場や夏場など、温度変化が大きい季節に結露が発生しやすくなります。
【家庭向け】日常生活への影響と対策
日常生活における結露は、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。
カビやダニの繁殖
窓ガラスやサッシ、壁面の結露は、多くの方が経験する現象です。結露によって窓ガラスやサッシ、壁面が常に濡れているとカビやダニが発生・繁殖しやすくなります。
カビが発生している環境では、カビの胞子が室内に飛散しやすくなり、これらの胞子を吸い込むことで、アレルギー症状を引き起こしたり、喘息などの呼吸器疾患を悪化させたりする可能性があります。
同時に、カビを餌とするダニも増殖しやすくなります。カビの胞子やダニのフン・死骸は空気中に舞い上がり、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を引き起こす原因となります。特に小さなお子様やアレルギー体質の方がいる家庭では、注意が必要です。
建材の劣化(腐食・腐敗)
木造住宅の場合、結露によって木材が湿気を帯びることで、腐朽菌が繁殖しやすくなります。腐朽菌は木材の組織を分解し、強度を著しく低下させるため、住宅の耐久性を損なう原因となります。
また、鉄骨や金属部分に結露が発生すると、錆や腐食が進む可能性もあります。
家庭での結露防止策
こまめな換気や除湿機の活用が有効です。特に水回りの換気は、入浴後や調理後など湿度が高くなりやすいタイミングで意識的に行いましょう。室内の加湿を控えめにするのも有効な対策です。
結露は外の気温と室内の温度差が大きいほど発生しやすくなります。冬場は暖房器具の設定を20度程度にし、室温を上げすぎないようにすることも効果的です。
結露が発生してしまった場合は、早期に拭き取り、カビの発生を防ぐようにしましょう。
【産業向け】工場・産業施設における結露問題
工場や倉庫などの産業施設では、結露が製品や設備に深刻な影響を与える場合があります。食品工場や精密機器の製造現場、医薬品関連施設、冷凍冷蔵倉庫など、結露の発生は多くの現場で課題となっており、放置すれば品質の低下や設備トラブルを招くおそれがあります。
こうした環境で安定して製品を製造するためには、結露の正しい理解と対策が欠かせません。
業種別の結露発生事例
結露は、温度や湿度の管理が不十分な環境で発生しやすく、特に製造業においては品質に関わる重大な問題を引き起こす可能性があります。
食品工場における結露
食品工場の室内は、製品の品質を維持するために低温に保たれている場所もあります。そのため、室内の相対湿度が高くなり、天井や配管に発生した結露が大きな問題となります。
特に、冷蔵・冷凍設備や冷却工程の周辺は温度が低く、水滴が発生しやすい環境です。これらの水滴が食品に混入すると、カビや細菌が繁殖し、製品の安全性を著しく損なう可能性があります。
原則として全ての食品事業者はHACCPに沿った衛生管理を行うことが義務付けられています。HACCPの管理項目には、施設の衛生管理や空調システムも含まれており、結露対策は食品の安全性を確保する上で不可欠な要素です。
精密機器・電子部品製造業における結露
精密機械や電子部品を扱う製造現場では、結露による設備故障や製品不良は大きなリスクです。電子機器や基板上に水滴が付着すると、短絡(ショート)や腐食を引き起こし、製品の信頼性が大きく損なわれます。
例えば、クリーンルームは空気中の微粒子や微生物などが少ない清浄な部屋です。クリーンルームでは、清浄度の管理以外に湿度管理も行われています。しかし、従業員の出入りや設置機器の発熱により局所的な結露が発生することがあり、結露が塵や埃を吸着し、品質を損なう原因となります。
精密機器や電子部品は防水機能が高い筐体に収納されていますが、わずかな隙間から湿気が侵入し、内部で結露が発生することも少なくありません。特に、温度変化の大きい環境下では、筐体内部の空気の飽和水蒸気量が変化し、結露のリスクが高まります。
精密機器や電子部品自体は非常に水分に弱いパーツです。たった一滴の水滴でも、製造プロセスに深刻な影響を及ぼす可能性があります。
精密機器・電子部品製造業における結露
精密機械や電子部品を扱う製造現場では、結露による設備故障や製品不良は大きなリスクです。電子機器や基板上に水滴が付着すると、短絡(ショート)や腐食を引き起こし、製品の信頼性が大きく損なわれます。
医薬品工場・クリーンルームにおける結露
医薬品工場やクリーンルームでは、わずかな結露であっても重大なリスクとなります。無菌環境の維持が絶対条件であるため、天井や壁に水滴が付着し、カビの発生を招くような事態は決して許されません。
近年では、医薬品業界にも食品業界と同様、より高度な衛生管理が求められています。空調設備の設計不備や断熱対策の不十分さによって発生する結露は、GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造基準)違反と見なされる可能性があります。
GMPが定める医薬品のライフサイクル管理では、安定性モニタリングが求められます。これは、品質が一貫して維持されているかどうかを継続的に確認・保証するための仕組みです。一般的な原薬、製剤においてはルーム内の清浄度や温湿度のモニタリングを行う必要があります。
そのため、結露の管理は製品の品質保証と安全性を確保する上で、非常に重要な要素といえるでしょう。
空圧システムにおけるドレン対策
空圧システムにおいて、ドレンの発生は避けて通れない課題であり、放置するとさまざまなトラブルを引き起こします。
空圧システムとドレンの関係
コンプレッサーから送り出される圧縮空気には、水分が必ず含まれています。この水分は、配管内を流れるうちに温度変化によって凝縮し、水滴や油が混合したドレンとなって現れます。ドレンは、コンプレッサーの性能低下や故障、配管の腐食を引き起こすため、適切な対策が必要です。
結露とドレン発生のメカニズム
コンプレッサーは、大気中の空気を取り込み、体積を小さくすることで圧力を高める機械です。この圧縮過程で、空気の温度は上昇しますが、同時に単位体積あたりに含まれる水蒸気量も増加します。
圧縮された空気は、アフタークーラーや配管を通過する過程で冷却されます。温度が低下すると、空気の飽和水蒸気量は減少し、含みきれなくなった水蒸気が凝縮してドレンとなります。
また、空圧システムでも結露は発生します。方向制御弁が切り替わり、シリンダから配管内へ圧縮空気が排出されるとき、圧力が下がることで圧縮空気が急激に膨張します。そのため、配管内の温度が下がり、空気中の水分が凝縮しやすくなります(断熱膨張)。
ドレンによる問題
ドレンの主成分は水であり、金属の部品で構成される空圧機器や配管内部に付着すると、錆や腐食を進行させます。
錆は機器の寿命を縮めるだけでなく、剥離した錆の粒子が下流の機器に流れ込み、さらなるトラブルの原因となります。特に、バルブやシリンダ内部での錆の発生は、致命的な故障につながる可能性があります。
ドレンがシリンダやバルブなどの摺動部に侵入すると、潤滑油(グリースなど)を洗い流してしまうことがあります。グリースが劣化したり洗い流されたりすれば、摺動抵抗が増大し、動作不良や部品の摩耗、シール材の劣化などを引き起こします。最悪の場合、動かなくなることもあります。
また、ドレンが凍結するような低温環境下では、エア機器の動作不良を招く恐れがありますので、ドレンセパレータの設置もおすすめいたします。
産業施設における結露対策(建物側)
断熱施工・遮熱対策
結露の主な原因の一つは、内外の温度差です。特に、外気温の影響を受けやすい屋根や壁、床などが冷やされると、その表面で結露が発生しやすくなります。
これに対して、建物の屋根、壁、床などに断熱材を施工すると、外部からの熱の侵入や内部の熱の流出を防ぎ、構造体の表面温度を室温に近づけることができます。
また、屋根や外壁に遮熱塗料を塗布したり、遮熱シートを設置したりすることで、太陽光による熱の吸収を抑え、建物内部への熱の侵入を軽減できます。 このような対策を行うことで、夏の室温上昇を防ぎ、冷房の負荷を軽減するとともに、結露の発生リスクも低減できます。
換気と空調制御の改善
施設内で発生する水蒸気を効率的に排出するためには換気が必要です。局所的に湿度が高くなりやすい場所(例:蒸気を多く使用する工程、洗浄エリアなど)には、専用の排気ファンを設置し、湿った空気を速やかに排出します。
夜間や休日など、操業していない時間帯の空調設定にも注意が必要です。必要以上に室温を下げたり、湿度を高くしたりすると、結露のリスクが高まります。
除湿・湿度管理と露点管理
施設全体の湿度が高い場合や、局所的に除湿が必要な場合には、除湿機の導入を検討します。 湿度センサーや露点計の導入も有効です。
現在の温湿度条件下で結露が発生する可能性のある温度(露点温度)を把握できるため、結露発生の危険性を事前に察知し、換気や除湿、空調設定の調整といった予防措置を講じることができます。
産業施設におけるドレン対策(機器側)
工場内のエア配管におけるドレン対策は、その発生箇所や目的に応じて、主に「上流」「途中」「末端/下流」の3つのポイントで実施します。
上流
ドレン対策の基本は、圧縮空気の源流であるコンプレッサー直後 で水分を除去することです。ここにエアドライヤーを設置することで、圧縮空気の露点温度を効果的に下げることができます。
上流で露点を下げることができれば、配管全体への水分の流入を大幅に抑制し、下流でのドレン発生リスクを低減できます。
途中
エアドライヤーで処理された圧縮空気でも、配管の温度変化や圧力変動などにより、途中で水分が再凝縮しドレンが発生することがあります。そのため、配管の低い箇所や分岐部など、ドレンが溜まりやすいポイントにはドレン排出装置(ドレントラップ)を設置し、ドレンが一定量溜まった段階で定期的にドレンを排出する必要があります。
意図的に配管に勾配を付けてドレンを集めて排出する方法も有効です。
末端 / 下流
エアシリンダなどのアクチュエータ直近(末端/下流)では、方向制御弁が切り替わり、圧縮空気が排出される際に断熱膨張が起こり、局所的に温度が急低下して結露が発生しやすくなります。
この対策として有効なのが、急速排気弁です。急速排気弁をアクチュエータの排気ポート近くに取り付けることで、アクチュエータ内の空気を直接大気へ排出し、配管内での断熱膨張とそれに伴う結露の発生を効果的に抑制します。

CKDのワンタッチ継手付き急速排気弁による結露対策
空圧システムにおける結露は、機器の作動不良や寿命低下を引き起こす厄介な問題です。

QELシリーズは、アクチュエータ(シリンダなど)の近くに取り付けることで、アクチュエータ内の空気を直接大気へ排出します。配管内での断熱膨張を防ぎ、結露の発生を大幅に抑制します。特に、配管容積がアクチュエータ容積より大きい場合や、小口径・短ストロークのアクチュエータで発生しやすい結露に有効です。

また、プラグタイプは既存の配管機材を変更することなく簡単に後付けが可能です。コンパクトな設計のため、設置スペースに困ることもありません。

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