電動弁、電磁弁の紹介(特殊流体用)|薬液、ガス、油、水、真空など

産業用機器や設備において、流体の制御は非常に重要な役割を果たしています。その中で電動弁と電磁弁は、さまざまな流体を精密に制御するための重要な機器です。電磁弁は電磁石の吸引力によって開閉を制御する弁で、素早い応答性が特徴です。素早く応答するためウォーターハンマーが発生しやすくなります。一方、電動弁はモータの力を利用して開閉を行う弁で、電磁弁に比べ大きな口径にも対応でき、高圧にも適しています。電磁弁と比較すると動作が遅いため、ウォーターハンマーは発生しにくくなります。これらの制御弁は、薬液、ガス、油、水、真空など、多様な特殊流体の制御に使用されており、産業界で幅広く活用されています。ここでは、これらの弁の特徴や選定方法、さらにCKDの製品ラインナップについてご紹介します。

CKDの電磁弁で対応可能な流体一覧

CKDの電動弁および電磁弁は、産業界のさまざまなニーズに応えるべく、多種多様な流体に対応しています。これらの制御弁は一般的な流体から特殊な流体まで、幅広い用途に使用することができます。
以下の表は、CKDの電磁弁で対応可能な主な流体の一覧です。

流体カテゴリ 流体名 詳細 対応機種
気体 圧縮空気 通常の大気を高圧状態にした空気 多種流体バルブ、専用流体バルブ
ドライエア(乾燥空気・乾燥エア) 湿気を取り除いた空気で、腐食や結露を防止するために使用される 多種流体バルブ、専用流体バルブ
不可性ガス 通常の条件下では燃焼や化学反応を起こさないガス
例:窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)など
多種流体バルブ、専用流体バルブ
支燃性ガス 燃焼を助ける性質を持つガスで、燃焼を維持・促進する
酸素(O2)
多種流体バルブ、専用流体バルブ
可燃性ガス/引火性ガス 支燃性 通常の条件下で容易に燃焼するガスで、火花や高温で引火する
水素(H2)
ガス燃焼システム機器、多種流体バルブ(特注対応)
蒸気 蒸気 液体が蒸発して気体となったもの 多種流体バルブ、専用流体バルブ
純水 不純物をほとんど含まない水 専用流体バルブ
水道水 公共の水道システムを通じて供給される水 多種流体バルブ、専用流体バルブ
工業用水 工業プロセスで使用される水 多種流体バルブ、専用流体バルブ
温水 加熱された水 多種流体バルブ、専用流体バルブ
潤滑油 機械の摩擦を減らすために使用される油 多種流体バルブ
灯油 暖房や照明に使われる液体燃料 多種流体バルブ
食用油 料理や食品加工に使用される油 多種流体バルブ
クーラント液 水溶性クーラント、油性クーラント 機械加工時の冷却および潤滑のために使用される液体 クーラントバルブ
燃料ガス 都市ガス 都市部で供給されるガス
13A、12Aなど
ガス燃焼システム機器
プロパンガス /LPG 液化石油ガスで、家庭や業務用の燃料として使用
プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)
水素(H2)  
薬液 無機溶剤 無機化合物を溶解するために使用される溶剤
硫酸(H2SO4)、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)など
ファイン・薬液弁、ライフサイエンス機器
有機溶剤 有機化合物を溶解するために使用される溶剤
アルコール(C2H5OH)、IPA(C3H8O)、シンナー、ベンジン(C6H6)など
多種流体バルブ、ライフサイエンス機器(SUSボディ)、サニタリーバルブ;ファイン・薬液弁
真空 高真空、中真空、低真空 多種流体バルブ、ライフサイエンス機器、高真空用電磁弁(HVB)ファイン・高真空弁
プロセスガス 活性ガス/半導体製造に利用 ファイン・薬ガス弁:AGDなど

お客様の用途や使用条件に最適な電磁弁を選定するためには、流体の種類だけでなく、温度、圧力、流量など、さまざまな要素を考慮する必要があります。CKDでは、これらの要素を総合的に判断し、最適な製品をご提案いたします。

資料
詳細な流体への対応状況や各製品の仕様については以下を参照ください。
>> 制御流体チェックリスト

バルブ選定シミュレーション

CKDでは、お客様の多様なニーズに応えるため、用途や使用条件に最適な流体制御機器を簡単に選定できるシミュレーションシステムをご用意しています。このシステムを使用することで、複雑な選定プロセスを効率化し、最適な製品を見つけることができます。

バルブ選定シミュレーションは、4ステップで簡単に利用できます。

1.CKDの公式ウェブサイトの機種選定システムページにアクセス。
2.「流体制御機器」のセクションを選択。
3.使用する流体の種類、温度、圧力、流量などの条件を入力。
4.入力した条件に基づいて、最適な流体制御機器の候補が表示されます。

流体制御弁の選び方について

流体制御弁は産業用機器や設備において不可欠な要素であり、適切な選定が効率的な運用と安全確保につながります。本章では、主に電動弁と電磁弁という2種類の流体制御弁について詳しく解説し、それぞれの特徴や使い分けのポイントを明確にします。

電動弁と電磁弁の2種類のタイプを理解

電気で動く制御弁には、電動弁と電磁弁の2種類があります。電動弁はモータの力を利用して開閉し、電磁弁は電磁力を使って素早く動作する弁です。ここでは、これら2種類の弁の基本的な仕組みと主な特徴を比較し、それぞれの使い分けのポイントを説明します。

電動弁

電動弁は、電気モータの力を利用して弁体を開閉する制御弁です。大口径や高圧の用途にも適しています。

方式 仕様・注意事項など 使い分けポイント
電動弁 ・大口径や高圧の用途に適している。
・モータの回転数や方向を制御することで、弁の開度を細かく調整できる。
・シール性能が高く、流体の漏れを最小限に抑えられる。
・オン/オフ制御、比例制御など、複数の制御方式に対応できる。
・電磁弁に比べると大型になる。
・高速作動が必要ない。
・確実な閉止能力が求められる。
・ウォーターハンマーを回避したい。
・圧力損失を少なくしたい。

電磁弁

電磁弁は、電磁石の力を利用して弁体を開閉する制御弁です。その素早い応答性から、様々な産業分野で広く使用されています。電磁弁には直動式、パイロット式、パイロットキック式の3つのタイプがあり、それぞれ特徴的な構造と動作原理を持っています。

方式 仕様・注意事項など 使い分けポイント
直動式電動弁 ・電磁石(ソレノイド)の吸引力だけで弁の開閉(切り替え)
・一般的に構造がシンプルで動作は確実
・圧力ゼロでも動作。
・コンパクトな装置にしたい
・高頻度で作動させたい
電動弁 パイロット式電磁弁 ・電磁石(ソレノイド)の吸引力と流体圧力によって作動
・大口径(32A~50A)まで対応可能。(8A~50A)
・直動式に比べて消費電力が少ない。
・直動式に比べて構造がやや複雑。
・主弁の構造によってピストンタイプとダイヤフラムがある。
・作動のためには最低作動圧力差が必要で、差圧ゼロでは動作しない。
・直動式でカバーできない配管径。
・たくさんの流量を流したい。
・消費電力を抑えたい。
パイロットキック式電磁弁 ・電磁石(ソレノイド)とキックバネを利用し、吸引力と流体圧力によって作動。
・大口径まで対応可能。
・主弁の構造によってピストンタイプとダイヤフラムがある。
・キックバネを使用することで、圧力差ゼロでも動作可能。
・直動式でカバーできない配管径。
・たくさんの流量を流したい。
・圧力差がはっきりしない。

電磁弁は、NC形(ノーマルクローズ形:通電時に開く)とNO形(ノーマルオープン形:通電時に閉じる)の2種類があり、用途に応じて選択します。

作動方式の違い

電磁弁は電磁石の力を利用し、弁体を開閉するバルブです。電磁石で弁体を直接動かす直動式と、電磁石で開閉するパイロット弁を介して主弁体を動かすパイロット式があります。

選定のために必要な確認項目

流体制御弁を適切に選定するためには、使用環境や要求性能に関する様々な項目を確認する必要があります。以下の表は、選定時に確認すべき主要な項目をまとめたものです。

検討項目 内容
使用流体 流体の種類(気体、液体、特殊流体など)や特性(腐食性、粘度、温度など)を確認します。適切な材質や構造の弁を選択するために必要な情報です。
使用流体圧力 一次側圧力
使用時の最高圧力、最低圧力、通常運転圧力を確認します。使用圧力に耐えうる弁を選定する必要があります。
流体温度 流体温度の範囲を確認します。高温や低温環境では、特殊な材質や設計が必要になる場合があります。
周囲温度 周囲温度の範囲を確認します。高温や低温環境では、特殊な材質や設計が必要になる場合があります。
電源電圧 利用可能な電源(電圧、周波数)を確認するために必要な情報です。
ボディ材質 流体の種類や特性(腐食性、温度、圧力など)に応じて、適切な材質を選ぶ必要があります。
例:黄銅、青銅、鋳鉄、アルミ、ステンレス、樹脂
必要流量 必要な流量や、それに対応するC値・Cv値など(流量係数)を確認します。適切な口径の弁を選定するために必要です。
接続口径 配管サイズや必要流量に基づいて、適切な口径を選定します。

不明な点や詳細な仕様の確認については、CKDの専門スタッフが丁寧にサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

CKDに相談

流体制御弁の選定には、前述の基本的な確認項目に加えて、機能についても考慮する必要があります。以下の表は、流体制御弁の主な追加仕様をまとめたものです。

機能 詳細
応答性 流体の種類(気体、液体、特殊流体など)や特性(腐食性、粘度、温度など)を確認します。適切な材質や構造の弁を選択するために必要な情報です。
使用流体圧力 システムの反応速度が求められる場面では、高速で正確な動作が必要になります。例えば、自動化された製造ラインや緊急停止システムでは、素早い反応が求められます。目的に応じた応答性を持つ制御弁を選定しましょう。

直動弁は作動スピードが速く高速応答をお求めに場合に適します。
パイロット弁は、大流量をお求めの場合に選択ください。
《高応答速度順》:直動式<パイロット式<エアオペレイト式<ボールバルブ
流量 流量は、システム全体の効率と性能に直接影響を与えるため、適切な流量を確保することが重要です。

豊富な接続口径・オリフィス径あり。
ウォーターハンマー低減型 ウォーターハンマーは配管システムに衝撃を与え、損傷や故障の原因となります。大きな衝撃音や振動が発生する場合は、ウォーターハンマー低減型の制御弁を選定しましょう。

ウォーターハンマー低減型の水専用流体弁:FWDやエアオペレイトバルブ・ボールバルブを推奨致します
ドライエア・不活性ガス対応 ドライエアや不活性ガスは、清浄度や純度を保つ必要があるため、これらのガスの特性を維持できる制御弁を選定する必要があります。

マルチフィットバルブやドライエア用マルチレックス-Zタイプを推奨致します。
エアオペレイト式では、ダイヤフラムタイプのLAD/NADがございます。
エア大流量 大流量のエア制御が必要な場合、適切な制御弁を選定することで、システム全体の性能と効率を向上させることができます。

エア専用弁:パイロット形EXAシリースがございます。
蒸気の制御 蒸気は高温・高圧の流体であり、特別な制御が必要です。蒸気専用の弁を使用することで、安全性を確保しつつ、効率的な蒸気の制御が可能になります。

蒸気専用流体弁SPKシリースほか、マルチレックスバルブ・H種コイルからご選択下さい。
異常昇圧 異常昇圧はシステムに重大な損傷を与える可能性があります。異常昇圧に対応する制御弁を選定することで、システムを保護し、安全に運転することができます。
高耐食 腐食性の高い流体や環境に対応するためには、高耐食性の材質を使用する必要があります。

ポペット形:マルチレックス・SUSボディタイプ、高耐食電磁弁:HB
ダイアフラム形:EMB(ボディ材質・SUS、テプロン・PTFE)がお選びいただけます。
更なる高耐食をお求には、接液部オールテフロン性のファインシステム機器もご用意しています。
シール材質

注)流体適合性
お客様が使用されるシステム、機械、装置への当社製品の適合性は、お客様自身の責任でご確認ください。
シールは流体の漏れを防ぎ、システムの安全性と効率を確保するために重要な部品です。耐薬品性や耐熱性に応じて適切なシール材を選定することで、最適な制御が可能となります。

・NBR(ニトリルゴム)=汎用的なエア・水など
・FKM(フッ素ゴム)=酸性流体など
・EPDM(エチレンプロピレンゴム)=アルカリ性流体など
・PTFE(フッ素樹脂)=蒸気・薬液など"

これらの項目を確認・検討することで、お客様の用途に最適な流体制御弁を選定することができます。不明な点や詳細な仕様の確認については、CKDの専門スタッフが丁寧にサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

CKDの製品ラインナップ

多種流体用電磁弁

多種流体に対応した電磁弁です。直動式、パイロット式、パイロットキック式の3つの制御方式をラインナップしています。様々な材質、オリフィス径、オプションを取り揃えています。

専用流体用電磁弁

特定の流体に対して最適な性能を発揮するよう設計された電磁弁です。直動式、パイロット式、パイロットキック式の3つの制御方式をラインナップしています。CKD独自の“旋回流路構造(特許取得)”を採用した薄型電磁弁もあります。

蒸気用電磁弁

蒸気を使用する様々なシステムにおいて、高い信頼性と耐久性を持った電磁弁です。直動式、パイロット式、パイロットキック式の3つの制御方式があります。直動式とパイロットキック式では、差圧0でも作動し、特殊なシール構造を持つため、高い耐久性を実現しながら蒸気の漏れを防ぎます。

真空用電磁弁

シール力が高く、真空保持力が強い高真空対応の直動式電磁弁です。OFFディレイ機能により停電時に真空チャンバーをオイルあがりの汚染から守る機能を持つ遅延真空電磁弁をラインアップしています。

エアオペレイトバルブ(シリンダバルブ)

エア駆動による高性能な制御弁で、様々な流体に対応できるため、産業分野で広く利用されています。小形から大口径までの接続口径に対応し、ボディおよびシール材質も幅広くラインアップしています。クリーンな環境で使用できることも特徴です。

ボールバルブ

エア駆動による高性能な制御弁で、様々な流体に対応できるため、産業分野で広く利用されています。小形から大口径までの接続口径に対応し、ボディおよびシール材質も幅広くラインアップしています。クリーンな環境で使用できることも特徴です。

クーラント用機器

工作機や冷却システムにおけるクーラント液の効果的な制御や管理を目的とした高性能な機器です。エアオペレイトバルブ、チェック弁、圧力スイッチをラインアップしており、各種製品が異物に強く、幅広い接続口径や圧力仕様に対応しています。

乾燥エア用電磁弁

厳しい環境条件下で使用でき、大気圧露点-60℃のドライエアや窒素ガスなどの不活性ガスの制御に最適な電磁弁です。直動式、パイロットキック式の2つの制御方式があります。

防爆形 2・3ポート電磁弁

防爆エリアでの使用を前提とした電磁弁です。様々な国際規格に適合する製品を揃えています。

CKDはバルブの選定からお手伝いいたします

CKDは流体制御のエキスパートとして、お客様の課題解決を全力でサポートいたします。バルブの選定はシステムの効率や安全性に直結する重要な工程です。

・使用条件に適したバルブがわからない。
・複雑な制御システムを設計したい。
・特殊な流体や環境に対応する製品がほしい。
・コスト削減や省エネルギー化を実現したい。
・トラブルシューティングや性能改善のアドバイスがほしい。

といったお悩みは、ぜひCKDまでご相談ください。CKDは、長年培ってきた技術力と豊富な経験を活かし、お客様のニーズに最適なソリューションを提供します。専門スタッフが最適なバルブの選定から複雑な制御システムの設計まで、あらゆる課題解決をサポートいたします。

また、より詳細な製品情報や技術資料が必要な場合は、CKDの公式ウェブサイトにて各種カタログをご用意しております。最新の製品情報や技術データをご確認いただけますのでぜひご活用ください。

まとめ

本記事では、電動弁と電磁弁を中心とした流体制御弁について、その特徴や選定方法、さらに当社の製品ラインアップを紹介しました。

電動弁と電磁弁は、用途に応じて使い分けることが大切です。

そして、流体制御弁を適切に選定するには、使用流体の特性、圧力・温度条件、流量、設置環境などの要素を考慮する必要があります。

CKDはバルブ選定シミュレーションシステムや製品カタログなど、様々なツールを通じてお客様の選定プロセスをサポートしています。流体制御弁に関するお困り事や疑問は、お気軽にCKDにお問い合わせください。