リチウムイオン電池用巻回機
THEME
カーボンニュートラルの実現に向けて加速する「車両の電動化」。今後もリチウムイオン電池の大幅な需要拡大が予測される中、CKDにおける重点事項の一つが電池関連設備事業への注力です。次世代自動車に不可欠な車載バッテリーとしての役割を担うリチウムイオン電池の生産の最前線を支えています。
MISSION
近年、地球温暖化への対策として温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの観点から、ハイブリッド自動車・電気自動車をはじめ、さまざまな車両の電動化が進んでいます。また、世界各国においてはガソリン車規制の動きが活発化。多くの自動車メーカーがハイブリッド自動車・電気自動車の増産を発表し、2035年には車載向けリチウムイオン電池の生産が世界的に拡大すると予想されています。このような背景から、リチウムイオン電池生産設備に対する投資も増加しており、当社が製造・販売を手掛ける「リチウムイオン電池用巻回機」も世界的に需要が高まっています。
リチウムイオン電池は、材料となる正極材、負極材、セパレータ(絶縁材)を決められた位置関係に重ね合わせて巻き取ることで生産されます。この巻き取る作業を行うのが、生産プロセスにおける組立工程の先頭を担う巻回機です。各材料の位置を制御する蛇行補正技術や、材料のテンション(張力)を決められた値に保つテンションコントロール技術など、多様な技術が求められます。
当然、巻回機が正常・安定稼働しなければ、組立工程の停止や不良品の発生といったリスクが生じます。そのため、製造現場では常にコストと品質の両立が求められます。車両において何よりも重視される“安全”に直結する商品のため、高い品質要求を低コストで実現する必要があります。
APPROACH
車載向けリチウムイオン電池は、車両の走行性能の向上をめざして日進月歩で材料が改善されています。例えば、電池の材料となる塗工物質の変化もその一つ。塗工物質が変われば、材料の硬さや装置内での滑り具合も変わります。また、材料の厚みが増して取り扱いが難しくなることも考えられます。材料の変化に応じて設備改良が求められるので、同じ設備を作り続ける“量産”によるコストダウンは現実的ではありません。また、単三電池のような一次電池とは違い、リチウムイオン電池には規格がありません。電池メーカーによってサイズ・仕様が異なる点も量産対応に不向きな理由となります。
そうした中で、本来はトレードオフの関係にあるコストと品質の両立に向け、CKDは設備の生産性を高めることで生産コストの抑制につながる巻回機を開発しました。簡単にいえば、電池をつくる時間を短縮できれば、同じ時間で従来の数倍の電池をつくれるようになります。仮に設備の値段が1.5倍になったとしても、今までの半分の稼働台数で同じ生産量を確保できれば、結果的にコストダウンにつながるというものです。
リチウムイオン電池用巻回機「PEW-380」
巻回された材料のイメージ
改良のポイントは、巻回機の仕組み・構造において、いかに材料を早く投入できるか、早く巻き取ることができるか。それが生産時間短縮および品質向上にも直結します。当然ですが、スピードのみを追求すれば生産時の巻き取り精度が低下します。材料を巻き取る軸の改良をはじめ、生産スピードと安定稼働の最適バランスを探りながら何度も試行錯誤を重ね、品質向上に取り組みました。
VISION
次世代自動車の進化に対応するため、お客様の知恵もお借りしながら、常に生産性の向上を追求しています。
そうした中で、現在では数年前と比べ1/5程度の時間でリチウムイオン電池を生産できるようになりました。
この巻回機は、世界的なリチウムイオン電池の需要増加に伴い受注も拡大。これまで1年に1台の納入だったお取引先様に対して複数台納入した事例も含め、受注数は数倍に増加しています。
同時に、お客様先では早期の生産立ち上げが求められており、当社においても多くの設備を並行して生産しなければならない状況が続いています。そこで、リチウムイオン電池用巻回機を事業部の重点事項とし、新たにプロジェクトを発足。設計、部品調達、設備組付・調整、動作確認と多くの作業が並行して進められる中で、情報共有と連携を徹底しながら巻回機の生産に取り組んでいます。また、事業部だけでなく会社としても環境負荷低減型商品として巻回機に注力し、今後も技術革新を継続しながらカーボンニュートラルの実現に貢献していくことを目指しています。
電池設備担当としての個人的な目標でいえば、車載向けリチウムイオン電池の需要がさらに高まっていく中で着実に納入台数・売上を伸ばしていくこと。今や、世界のあらゆる国で車が走行しています。その一台一台に「自分の会社の機械でつくった電池が搭載されているんだ」と胸を張って言えるようになれたら、これ以上誇らしいことはありません。
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