窒素充填とは?食品・工業製品への活用から窒素充填機の種類

窒素充填は、食品や飲料の鮮度保持から工業製品の品質安定に至るまで、幅広い分野で活用されている技術です。本記事では、窒素充填の基本的な仕組みやメリットに加え、食品や工業製品への具体的な採用事例や窒素充填機の種類についても解説します。

窒素充填とは?

窒素充填は、食品や飲料、化粧品、工業製品など、多岐にわたる分野で活用されている保存技術です。容器内の酸素を窒素ガスに置き換えることで、酸化による品質劣化を防ぎ、製品の鮮度や風味、外観を長期間にわたり保持します。

食品業界では賞味期限の延長や風味の維持に、工業分野では酸化防止や安全性向上に貢献しています。

窒素充填の一般的な活用分野とメリット

窒素充填の具体的な活用の目的として、以下のような分野での使用が挙げられます。それぞれの分野で、窒素の持つ特性を活かし活用されており、製品の品質維持や安全性向上に貢献しています。

食品保存

窒素ガスは食品の包装に広く使用されており、以下のようなメリットがあります。

酸化防止

窒素は、常温・常圧では他の物質と反応しにくく、化学的に安定な性質を持つ不活性ガスです。食品や飲料の容器内の空気を窒素に置き換えることで酸化を防ぎ、風味や品質を保持することができます。

窒素は無色、無臭、無味の気体であるため、食品の風味を邪魔することもありません。

ポテトチップスやお米、各種スナック、コーヒー豆、ワインなど、酸素による酸化で風味が損なわれやすい食品の品質維持に利用されています。

窒素は酸化防止機能を有した製造用剤として、食品衛生法で使用が認められているガスです。

保存期間の延長

前述の通り、窒素は不活性ガスであり、酸素の代わりに包装内に充填することで、酸化による品質劣化を防止します。

特に、油脂やビタミンCなどの酸化されやすい成分の劣化を防ぐ方法として有効です。二酸化硫黄、亜硫酸塩等の酸化防止剤を使用せずに、食品の酸化を抑制し、品質保持が可能となります。これは、酸化防止剤の誤飲リスク低減にもつながります。

また、窒素は水分を含まないため、カビなどの発生を抑える効果も期待できます。

窒素充填は賞味期限を延ばしながら風味や食感を保つことができるため、消費者満足度の向上やフードロスの削減にもつながっています。

工業用途

酸化防止

工業分野で使用される金属やゴムも酸素の影響を受けやすい材料です。

金属は空気中の酸素や水分と反応し、錆が発生します。ゴムも空気中の酸素と反応し、弾力性の低下や硬化が進む材料です。

窒素充填は、不活性ガスである窒素を使用して保存環境から酸素を追い出し、酸化の進行を防ぎます。

金属部品の保管、ゴム素材の長期保存においては、窒素を充填することで製品の品質維持に大きな効果を発揮します。また、湿気の影響を抑えることもできるため、腐食や錆の発生を防ぎ、保存環境をより安定化させることができます。

例えば、電子部品では、窒素充填により長期保存時の錆や腐食リスクを低減、ゴム製品では、窒素による保存が素材の柔軟性を保ち、使用時の性能劣化を最小限に抑えます。このように、窒素充填は工業分野での酸化防止対策として信頼性の高い選択肢と言えるでしょう。

化学反応の制御

窒素は不活性であるため、化学反応を抑制する効果があります。

化学薬品のタンクや紫外線(UV)硬化工程では、空気中の酸素による反応や爆発のリスクを抑えるために、空気を窒素に置き換える防爆対策や環境維持が行われています。また、窒素は化粧品や飲料、薬など酸化を避けたい製品の保存にも利用され、品質を保持するための重要な役割を果たしています。

タイヤへの充填

※CKDの窒素充填は主に産業向け用途ですが、参考として日常的な一般用途としての利用例を挙げています。

窒素は空気よりも分子が大きいため、タイヤ内の圧力が安定しやすく、空気圧の調整回数を減らせます。さらに、酸化や腐食を起こしにくい性質もあり、タイヤの寿命延長に寄与します。

また、温度変化による圧力の変動が少ないため、高速走行や気温差の大きい地域でも安定した性能が期待でき、タイヤの摩耗を均一に保つことで安全性や燃費の向上にもつながります。

他の保存方法との比較

窒素充填は、食品や製品の保存において非常に効果的な方法です。他の保存方法と比較すると、いくつかの特有の利点があります。

真空包装

真空包装は、容器内の空気を抜いて密閉する方法です。

この方法は酸素を減少させるため、酸化防止に効果的であり、生鮮食品や乾燥食品の保存に広く使用されています。しかし、窒素充填に比べて微生物の抑制効果は劣るため、保存対象によっては限界があります。また、真空包装は物理的な圧力に弱く、衝撃や輸送中の取り扱いによっては破損する場合があり、包装材の選定や取り扱い方法に注意が必要です。

真空包装は包装内の水分蒸発を防ぐメリットがあり、乾燥を避けたい食品や化粧品にも適していますが、酸化防止効果を強化したい場合は、窒素充填との併用が推奨されることもあります。

脱酸素剤の使用

脱酸素剤は、包装内の酸素を吸収する物質です。

鉄粉や含水アルミノケイ酸塩(ゼオライト)、食塩、活性炭、ビタミンCなどが用いられています。

脱酸素剤は簡単に使用でき、コストも低いため広く利用されている方法です。例えば、スナック菓子や乾燥食品の包装によく用いられています。しかし、脱酸素剤の効果は包装状況や製品の特性によって持続時間が異なるため、長期保存には限界があります。

また、脱酸素剤とシュリンク包装を併用する場合、シュリンク包装による物理的な収縮と、脱酸素剤による酸素吸収に伴う容積減少の両方の影響で、内部製品に過度な圧力がかかり破損する可能性があるため、慎重な設計が求められます。

冷凍保存

食品を低温で保存する方法です。

冷凍保存は、食品の劣化を防ぎ、長期間保存を可能にする効果的な手法です。しかし、解凍時に食品が水分を失い、食感や風味が低下するリスクがあるため、品質を維持する工夫が必要となります。

この点で窒素充填は冷凍保存と相性が良く、冷凍前に窒素を包装内に充填することで、酸化や湿気の影響を最小限に抑えることができます。また、窒素は冷却時に結露を防ぐ役割も果たし、食品の表面に氷の結晶が形成されるのを抑制します。そのため、冷凍保存後も食品の鮮度や見た目が良好に保つことができるのです。

さらに、窒素充填を活用した冷凍食品は、解凍後もより自然な味わいと質感を維持できるため、消費者の満足度向上も期待できます。このように、冷凍保存と窒素充填の組み合わせは、食品の保存性を向上させる革新的な方法として注目されています。

窒素充填機の種類

窒素充填機は、食品や工業製品の保存に欠かせない窒素充填を効率的に行うための装置です。窒素充填機にはいくつかの種類があり、それぞれの機種には特有の特徴があります。

ノズル式充填機

ノズル式充填機は、簡易的なガス置換包装を行うための装置で、個別の容器に対してガスを充填する際に使用されます。この方式は操作がシンプルで、小規模な生産ラインや特定の商品に適しています。また、ノズルの種類や設定によって、さまざまな形状やサイズの容器に対応できる柔軟性があります。

チャンバー式充填機

チャンバー式充填機は、複数の容器を同時に充填できる効率的なモデルで、チャンバー内全体を脱気後にガスを充填します。この方式は大量生産に適しており、密閉性が高いため、酸素濃度を極限まで低下させることが可能です。また、高品質な充填が求められる食品や医薬品の包装に広く利用されています。

ガスフラッシュ方式充填機

ガスフラッシュ方式充填機は、主にピロー包装向けの装置で、包装容器内にガスを吹き付けて充填します。この方式は高速充填が可能で、大量生産ラインに適しています。さらに、包装材の選択肢が広く、スナック菓子やコーヒーなど、多様な製品に対応できることが特徴です。

CKDの窒素ガス精製ユニット(NS・NSUシリーズ)

窒素充填機は、食品や工業製品の保存に欠かせない窒素充填を効率的に行うための装置です。窒素充填機にはいくつかの種類があり、それぞれの機種には特有の特徴があります。

特徴 説明
横置き設置対応 新たに横置き設置が可能となり、デッドスペースや装置へのビルトインなど、設置場所の自由度が向上。
濃度の自由度 窒素濃度を90%~99.9%の幅広いレンジで選択可能。低濃度窒素を必要とする用途にも対応。
簡単精製 大掛かりな設備を必要とせず、中空糸分離膜を利用して手軽に窒素富化ガスを生成。
省スペース・省工数 装置の近くに設置可能なため配管を簡略化し、必要な流量に応じた最適なシステム構築が可能。
メンテナンス性 ボンベの交換や補充が不要で、部品交換も配管したまま実施可能。
多彩なラインアップ 17流量、25のラインナップから最適機種を選択し、インライン酸素濃度計、流量計で窒素供給状態の常時監視が行えます。

詳しい仕様や導入に関するご相談など承っております。
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