バランサとは?使用例と選定方法について

工場などで働くときに必要になる人力による重量物の搬送。労働基準法及び厚生労働省の通達(※1)では、人力で搬送できる最大重量が決まっています。実際には重量物を人手で運んでいるケースは多々見られ、作業者が限定されたり、腰痛に悩まされたりしていることが多いという事実があります。

そこで、重量物の人力による作業を補助する装置「バランサ」が注目されています。バランサは、製造業をはじめとする工場や現場で作業員の負担を軽減しているのです。

(※1)厚生労働省「18歳以上男子の取り扱う重量 の「見える化」

バランサとは

バランサの基本的な仕組みと役割を説明します。

バランサの基本的な仕組み

バランサとは、作業者が重量物を持ち上げたり移動したりする際に、重量を支えて作業負荷を軽減するための装置で、助力装置や重量補助機器と呼ばれることもあります。天秤にどれだけ重いものを載せても、もう一方に同じ重量の物を載せれば釣り合います。バランサはこれと同じ仕組みであり、具体的には空気圧シリンダなどで重量と釣り合う力を発生させます。

バランサの役割

ある重量の物を持ち上げるのに必要な力は誰が持ち上げても同じですが、年齢や性別によって感じる負担は変わります。そのようなとき、バランサでアシストすることで、作業者の力の大小に関わらずすべての人が同程度の負担で同じ作業をできます。これにより、作業者の腰痛やけがを防ぐことができます。

助力装置とよく比較される機構

代表的なバランサを紹介します。

CKDバランサ(パワフルアーム)

床面から立ち上がった1〜3本のアームが、下から重量物を支えて搬送をアシストします。アームは空気圧シリンダを内蔵しており、圧縮エアが重量に釣り合う力を発生させます。重量物と可動部(アーム)が近いため、作業者が重量物を移動させやすいメリットがあります。固定式と移動式があり、移動式の場合は台車で移動できます。

アーム式バランサ

アーム式バランサは、シリンダとリンク機構を組み合わせて、重量物をフックなどで吊り下げたり、下から支えたりします。可搬重量が大きい傾向にありますが、動力点と作動点が離れているのでバランサ自身が大きくなりがちです。重量物を止めたいときに慣性力がかかるので扱いにくいといったデメリットがあります。

巻き上げ式バランサ

巻き上げ式バランサはホイスト(小型クレーン)のような形をしており、フックの先に重量物を吊り下げて使用します。アーム式バランサがXYZ軸に加えて旋回の動作ができるのに対して、巻き上げ式バランサはZ方向の動き(持ち上げ/下げ)しかできません。平面(XY方向)に動かす場合は、工場側に別途レールの設置などが必要です。

パワードスーツ

パワードスーツは人が身に着けて使用し、身体に負担がかかる作業をサポートすることで、主に腰を保護するものです。可搬重量は比較的小さいのですが、可動範囲が広く移動も自由にできるというメリットがあります。また、身に着ける装置なので、人しか入れないような狭い空間でも使用できます。

産業用ロボット

産業用ロボットは人間の動きをロボットに置き換えることで、作業を自動化(無人化)できます。しかし、導入コストが比較的高く、危険防止のために稼働中のロボットに人が近づけない対策(柵やライトカーテン)が必要であるなど、検討事項は多岐にわたります。

バランサの選定基準となる項目

バランサを選定する際の基準となる項目を紹介します。

コンパクト性

コンパクト性を考えるときは、作業範囲をXYZ軸の3次元で考える必要があります。平面(XY軸方向)だけでなく、天井配管など人間の頭上の空間(Z軸方向)も検討しましょう。また、旋回できるバランサの場合は、最大回転半径の中に干渉物がないことを確認する必要があります。

移動性

複数の作業にバランサを導入したい場合は、移動性も考慮しましょう。固定式のバランサの場合は対象作業の数だけバランサが必要ですが、移動式なら数を減らせます。

可動範囲

可動範囲とは、ある場所にバランサを設置したときの作業可能範囲のことです。作業により必要な可動範囲は異なるため、想定する作業のうち最も広い可動範囲を前提に検討しましょう。

可搬質量

バランサの選定で最も大切なのが可搬質量です。そもそもバランサを導入する目的は、人の作業負担を軽減すること。目標とする力が発揮できないのであれば、バランサを導入する意味がありません。

CKDパワフルアームの特長

CKDバランサ「パワフルアーム」の特長を紹介します。

操作性

パワフルアームには二本のグリップ(左右の手で一本ずつ)が付いています。両手でしっかりグリップを握って重量物を移動できるため、操作性は良好です。低摺動のエア制御尾技術の活用で、片手でも操作できるほど軽くて滑らかな操作性を実現しており、比較的力の弱い方でも簡単に操作できます。

コンパクトなサイズ感

広い範囲に対応できるバランサは一般的には大きなものになりがちです。しかし、パワフルアームはリンク機構とシリンダが一体となって下から重量物を支える構造のため、頭上の空間を使用せず(後述のアタッチメントを使用する場合を除く)、作業範囲に比較して小さなサイズ感が特徴です。また、格納時にはアームを折りたたんでさらにコンパクトになります。

安全性

パワフルアームにはさまざまな安全対策が施されています。たとえば、重量物を運搬中に、エア供給用バルブを閉じて現状の位置を保持し続けます(ブロックバルブによる落下防止)。メカロック仕様では、アームに内蔵された空気圧シリンダのロッドをスリットで物理的に固定します。そのため、空気の特性(圧縮・膨張)によるわずかな変位もありません。
他にも回転部にロックがかかる、関節部に指が入らない構造であるなど、安全対策が施されています。

CKDパワフルアームのアタッチメント例

段ボール吸着

段ボールの搬送にも吸着タイプのアタッチメントが使用できます(段ボール専用タイプ)。操作方法は袋の吸着アタッチメントと同様です。運搬中に吸着を解除しようとしても、インターロックによって操作が無効となるため安全です。

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材料袋吸着

お米など袋に入った重量物を搬送するには、吸着タイプのアタッチメントを使用します(材料袋専用タイプ)。アタッチメントを袋の上に置き、ボタン操作一つで吸着がはじまります。材料袋によって透過率が異なるのでアタッチメント選定には注意が必要です。

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一斗缶吸着

一斗缶の搬送にも吸着タイプのアタッチメントが使用できます(一斗缶専用タイプ)。操作方法は他のアタッチメントと同様です。アタッチメントにリング状の持ち手があり、着地させるときの位置調整に便利です。ハンドルがある一斗缶はフックでも搬送ができます。

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コンテナ・ばんじゅう

部品用のコンテナや、食品用のパレット(ばんじゅう)に対応したアタッチメントです。二本のアームでコンテナやばんじゅうを外側から挟み込んでクランプします。つかみ幅を切り替えられるため、一つのアタッチメントで幅の異なるコンテナやばんじゅうに対応できます。

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ロール材内径クランプ

ロール材の搬送には、内径をクランプするアタッチメントが使用できます。ロール材の中心に太い棒状のアタッチメントを挿入してボタン操作すると、クランプ部品が円周状に広がります。搬送途中に空中で90度回転させる(上向きのものを横向きにするなど)ことで装填できます。

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フック式ドラム缶

蟹のはさみを長くしたような2本のアーム(アタッチメント)の根本でドラム缶上部の円周部をつかみ、一方の爪の先端でドラム缶の胴体を支えます。地切りするとドラム缶の重量によりアタッチメントが閉まる方向に力がかかり、安全に搬送できます。

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まとめ

人が重量物を搬送するときの負担を軽減する、バランサを紹介しました。バランサにはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。CKDの パワフルアームは、さまざまな作業に適したバリエーションや、多様なアタッチメント、安全性を考慮したデザインなどの優れた点を評価いただき、豊富な導入実績があります。お客様それぞれの作業環境に適したご提案が可能です。
パワフルアームの動きは実際に見て体験できます。デモや見学をご希望の方は、最寄りのCKDの営業所までご連絡ください。