電動アクチュエータとは?仕組みと種類・選定方法・工程ごとの活用について

世界的な環境問題やCO2削減への関心の高まりから、従来空圧機器の独壇場だったアクチュエータにも、電動化の波が押し寄せています。電動アクチュエータにはエネルギーコストの低さに加え、ストローク途中での多点位置決めやチャックの把持力調整が可能など、他にも多くのメリットがあります。
電動アクチュエータの概要や種類、そして電動アクチュエータがエアシリンダと比較して有利な点を解説いたします。

電動アクチュエータとは

電動アクチュエータは、産業機械や自動化システムの中心的な役割を果たす機械要素の一つです。電気モータの回転力を直線運動や回転運動に変換して、さまざまな産業用途で位置、速度、トルクなどを制御するために使用されます。

電動アクチュエータの基本的な仕組み

電動アクチュエータは主にモータと伝達機構で構成されています。モータにはステッピングモータやサーボモータが主に使用されます。モータの回転角を制御できるため、ストローク途中でも任意の場所で位置決めができます。
伝達機構はモータの回転力を運動に変換する部品です。直線運動型の電動アクチュエータの場合、伝達機構には主にボールねじとリニアガイドが用いられます。ボールねじは、モータの回転力をピストンロッド、若しくはスライダの直線運動に変換します。リニアガイドは、ピストンロッド、若しくはスライダの直進性を担保する部品です。
回転運動型の電動アクチュエータ(ロータリーアクチュエータ)の場合、伝達機構には主にギアやベルトが用いられます。ギアは、モータの回転力をそのまま回転運動に変換し、ベルトはモータの回転力を静かで滑らかな形にして伝えます。

電動アクチュエータの種類

電動アクチュエータは大きく分けて、モータ付きとモータレスに分かれます。モータ付きはアクチュエータにモータが組み込まれているのに対し、モータレスはモータが付いておらず、使い慣れた各メーカのモータを後付けして制御することが可能です。モータ付きはステッピングモータ駆動タイプとサーボモータ駆動タイプに分かれます。ステッピングモータ駆動タイプは外周側に刻まれた小歯(ステップ)単位で駆動し、各ステップで一定の角度に移動するため、シンプルな制御で精密な位置決めができます。これに対し、サーボモータ駆動タイプはフィードバック制御を用いて目標位置や速度を決めるため、動的な応答性があります。この2種類のモータに応じてアクチュエータの種類が分かれます。

電動アクチュエータは駆動方法や機能によって、主に次の5種類に分かれます。

スライダタイプ・ロッドタイプ

両者は、どちらもモータの回転力を直線運動に変換するものですが、構造が異なります。スライダタイプは、主にボールねじとリニアガイドを用いて、スライダの直線運動を行います。位置決め精度が高く、応答速度が速いため、主に一般搬送工程や組立機に使用されることが多いです。
ロッドタイプは、主にボールねじを用いてピストンロッドを伸縮させます。ピストンロッドの伸縮が大きく、ガイド内蔵でオフセットしたワークにも対応できるため、圧入工程や昇降用途などに使用されます。

画像1

グリッパタイプ

ワークを掴むための電動アクチュエータです。一般的に二爪タイプと三爪タイプがあり、前者は角型のワーク、後者は丸型のワークを掴むのに適しています。

画像2

ガイド付きタイプ

空圧機器のガイド付きシリンダに相当する電動アクチュエータです。空圧機器と同じボディを使用することで高い剛性と耐久性を備えています。

画像3

ロータリタイプ

回転運動ができる電動アクチュエータです。回転途中での多点位置決めや反転動作、割出動作などができます。加減速度設定ができるため、ソフトスタート・ソフトストップに対応でき、ショックアブソーバ不要で使用できます。

画像1

ストッパタイプ

ワークを止めるための電動アクチュエータです。コンベア上を流れる製品を一時的に止めて、圧入や検査などを行う場合に使用します。

画像1

電動アクチュエータの選定基準

電動アクチュエータはどのように選択すれば良いのでしょうか?次のポイントに気を付けて選定してみましょう。

可搬質量

可搬質量は搬送できる質量です。可搬質量が大きくなれば、必要となるアクチュエータのサイズとモータのサイズも一般的に大きくなります。用途に応じた可搬質量に対応できるアクチュエータを選択しましょう。

ストローク

ストロークはアクチュエータが動作できる長さです。ストロークはアクチュエータの動作範囲を定義するため、必要な動作範囲を満たしているかを確認しましょう。

繰り返し位置決め精度

繰り返し位置決め精度は、同じ位置に同じ方向から繰り返し位置決めを行った際の誤差を指します。精密な位置決めが必要な作業では、高精度のアクチュエータが必要になるため、要求に基づいて、モータのタイプや駆動方式を選定しましょう。

速度

アクチュエータの動作速度は生産性に直接影響を及ぼします。そのため、決められたタクトタイムの中での動作を実現するためには、自ずと必要な速度が決まります。高速動作が求められる場合は、必要な速度に対応できるアクチュエータを選びましょう。

使用環境

電動アクチュエータの動作環境には温度、湿気・水(雰囲気、直接かかる)、薬液(雰囲気)、粉塵など、さまざまなものが想定されます。温度と薬液については電動アクチュエータに使用されている材質を確認し、水と粉塵については保護等級を確認しましょう。

電動アクチュエータの特性

電動アクチュエータの長所

電動アクチュエータのメリットには、以下のようなものがあります。

高効率: 一般的に電動アクチュエータは空圧機器より効率が高いと言われています。同じ動作をさせるために必要なエネルギーが少ない傾向にあるため、省エネにつながりやすいといえます。

位置決めの点数:通常、エアシリンダはストロークの端点(二点)しか位置決めはできません。しかし、電動アクチュエータはモータにより動作するため、任意の位置(多点)で停止させることができます。

位置決め精度: 電動アクチュエータにはボールねじや滑りねじがついています。ボールねじやモータの分解能などにもよりますが、ストローク途中における精度の高い位置決めが可能です。

動作速度の調整: 電動アクチュエータはストローク途中で動作速度を変えられるため緩急をつけた動作が可能になります。

電動アクチュエータの短所

エアシリンダに比べ購入コストが一般的に高くなる傾向にあります。また、制御システムも複雑になるため設置やメンテナンスに、より専門的な知識が必要です。エアシリンダに比べて防水性や防塵性などの耐環境性が低い場合がありますので注意が必要です。

電動アクチュエータ以外の駆動機器

電動アクチュエータの短所を補う駆動機器にはエアシリンダがあります。エアシリンダは、電動アクチュエータに比べて一般的にコストが安く、小型・軽量です。予算や設置スペースが限られている場合や2点間の往復動作の場合は電動アクチュエータよりも適した選択肢となり得ます。また、エアシリンダは厳しい環境条件にも比較的強く、簡単なオン/オフ制御が求められる場面での使用に適しています。用途や使用環境に応じては、電動アクチュエータ以外の選択肢も検討してみましょう。

CKDがおすすめする工程別電動アクチュエータの選定方法

電動アクチュエータはどのような工程でおすすめなのでしょうか?次の工程において電動アクチュエータが向いている条件を解説いたします。

ハンドリング工程

ハンドリング工程はワークを掴む(把持する)工程です。

電動アクチュエータのおすすめポイント!

・ソフトハンドリング
ワークが柔らかい場合、把持力が大きいとワークを変形させてしまう場合があります。しかし、グリッパ(電動アクチュエータ)は把持力調整ができるため、柔らかいワークにも対応できるのが特徴です。また、ワークサイズに応じてストロークを調整できるため、多品種ワークに対応できます。

画像1

搬送工程

搬送工程とはハンドリングしたワークを水平、あるいは垂直に搬送する工程です。

電動アクチュエータのおすすめポイント!

・精度の高い多点位置決め
空圧機器ができない多点位置決めを電動アクチュエータなら実現できます。3ヶ所以上の高精度位置決めが必要な場合は電動アクチュエータが向いています。

画像2

クランプ工程

クランプ工程とは圧入、検査、組立などの作業を行うためにライン上で一時的にワークを固定する工程です。

電動アクチュエータのおすすめポイント!

・クランプ速度の調整
・ソフトクランプ
ストロークの途中で移動速度を調整しながらクランプしたい場合は、電動アクチュエータがおすすめです。また、クランプ力を調整したり、クランプする瞬間の速度を遅くしたりすることで、ソフトクランプもできるため、ワークが柔らかい場合も電動アクチュエータが向いているといえます。

画像1

圧入工程

圧入工程とはワーク同士を強い圧を加えることで押し込む工程です。

電動アクチュエータのおすすめポイント!

・推力や圧入速度の制御
圧入は比較的大きな推力が必要なため、一見空圧機器の方が向いていると思われがちですが、推力や圧入速度を調整したい場合には電動アクチュエータが向いています。また、指定の位置(深さ)まで圧入されたか確認できることも、電動アクチュエータの特徴です。

画像1

オシレート工程

オシレート工程とは、ある2点間を決められた角度で振り子のように旋回を繰り返してワークを搬送させる工程です。前述の搬送工程は直線運動でしたが、オシレート工程は回転運動であるという違いがあります。

電動アクチュエータのおすすめポイント!

・多点位置決め
複数のポイントに停止でき、割出動作にも使用できるため回転を伴うロータリタイプでも、多点位置決めの点においては、電動アクチュエータにメリットがあります。

画像1

CKDの電動アクチュエータ

産業分野のシステム自動化をサポート

これまで、ローコストで容易に自動化を実現できる空圧機器を中心にファクトリーオートメーションが発展してきました。コストの低い空圧機器は装置のコストを下げ、生産される製品のコストを下げ、エンドユーザーの価格競争力を支えてきたことでしょう。しかし、近年ではSDGsが広く認知されるようになり、徐々に電動アクチュエータを使用した環境問題に配慮したものづくりが社会的に受け入れられるようになってきています。但し、空圧機器・電動アクチュエータには得手不得手があります。両方の製品を扱っているCKDだからこそ、お客様の用途や目的に合わせた最適なご提案ができます。

CKDの製品ラインナップ

CKDはDDモータやメカインデックスなど回転系のアクチュエータが充実しています。また、電動アクチュエータのバリエーションも豊富であり、スカラロボットや画像処理ソフトも発売しています。食品や二次電池など特定業界向けに特化した製品シリーズをいち早く手がけるなど、市場要求にマッチしたものづくりに取り組んでいます。

エア&電動いいとこどり

CKDはエアシリンダと電動アクチュエータの両方を開発・製造しています。それぞれの機能やコストをトータルで判断し、「エアと電動のいいとこどり」で最適なソリューションをご提案いたします。ぜひご相談ください。

CKDの電動アクチュエータの製品ページはこちら

お問い合わせはこちら